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えっ!いじめ?
キンコンカンコーン キンコンカンコーン

20分の中休みが終わり、3時間目の始まるチャイムが鳴った。

欠席はいないはずなのに 空席がある。

『あれっ?A君はどうしたのかな? 誰か知らない?』
担任が子ども達に聞いた。

「しらな~い!」

『B君、C君、今日は一緒に遊ばなかったの? 知らない?』
「しらな~い!」

5分たった。
A君は、まだ現れない。

10分たった。
やっぱり現れない。

『みんな、本当に知らない? どこかで動けなくなってるのかな。』
「・・・・・・。」

『先生はこれから学校の中を探してくるから、自習しててね。』
「ぼくも探しにに行くよ。」
「私も行きます。」
「ぼくも・・・。」
「わたしも・・・。」

『ありがとう。
 だけどもう授業中だから、みんなでバタバタ動いたら
 他のクラスに迷惑がかかるね。みんなはここで自習しててね。』
「はあ~い。」

小学校4年生のクラスの この担任は、産休先生だった。
まだ20代半ば。
出産で休んでいる担任に代わって、このクラスを預かっている。
絶対にこの子たちを守らなければならない。

体育館の周辺、特別教室の周辺、渡り廊下、屋上に続く階段・・・
保健室、A棟、B棟、全ての階のトイレ・・・
思いつくところは全て探したがみつからない。
途中で教室の様子も見に戻る。

『A君戻ってきた?』
「まだこないよ~。」

『本当に誰も知らない?
 どこかで動けなくなってるかもしれない。
 怪我でもしたのか、どこかが痛くて動けないのか心配だよ。
 本当に何も知らない?』
「わかんないよ~。」

『そうかぁ。もう1回探してくるね。静かに自習しててね。』
「はあ~い!」

これはただ事ではないと思った。
職員室に行き、校長に相談した。
【家に連絡してごらん。帰ってるかもしれないよ。】
『はい。』

トゥルルルル トゥルルルル・・・ ・・・

ガチャっ!
「もしもし・・・?」
『もしもし、A君?』
「うん。」
『よかった。無事だったんだね。心配したよ。』
「うん。・・・。」
泣き声になった。

『どうしたの? 何かあったの?』
「せんせい・・・。グスン、グスン・・・。」
『なにか イヤなことでもあった? 』
「せんせい・・・。」

『おうちの人、いるの?』
「ううん(NO)。」
『ひとりじゃ心細いでしょ? 先生が行こうか?』
「・・・・・・。」

冬だった。
学校ならストーブがついているが、家人のいない部屋では寒いだろう。

『寒いでしょ? 学校においで。先生が迎えに行くよ。』
「ううん。ぼく、自分で学校に行く。」
『じゃ、途中まで迎えに行くからね。気をつけておいで。ゆっくりでいいから・・・。』

電話の横で聞いていた校長は
【早く行ってあげなさい。】と 即座に許可をくれた。

運動靴を履くと急いで A君の家の方向に走り出した。
校門を出るとすぐに、A君をみつけた。
駆け寄った・・・。

『A君・・・。』
「せんせー。」

職員室のストーブのそばに二人で座った。
『寒かったでしょう?』
「うん。」
泣き止むのを待って、いきさつを聞いた。

発端は小さなことだった。

昨日、みんなで一緒に遊ぶ約束してたのに行けなかった。
みんなに怒られた。
子どもの世界ではよくあることだった。

ただ、約束の場所に行く途中で5~6年生の上級生につかまって
野球だったかドッジボールだったか そのメンバーに入れられたから
友達のところに行けなかった。

自分のせいじゃない! 無理じいした上級生が悪い!
A君は謝らなかった。
仲間の怒りをかった。
「謝れよ!」
「俺は悪くない!」
言い争いになった。
直接殴りあいにはならなかったが、怒りのおさまらない仲間たちは
A君に砂をかけた。
蹴って砂をかけたか、手でかけたか、数人にかけられた。

そういうことだったのか・・・。

当時(1980年代前半)世間では、
いじめによる子どもの自殺が続いていた。
2006年の 現在の状況と似ている。
全国で いじめを苦にした自殺が連鎖して 
毎日のようにニュースで取り上げられていた。

さて、どうするか・・・。


気持ちの落ち着いたA君と一緒に教室にもどった。
クラスメイトたちは 安堵した表情だった。
「どこに行ってたの?」
「お前、心配かけるなよ~。」

『A君はね、心がつぶれてしまって家に帰っていたんだよ。
 おうちの人はお仕事で留守だったから
 寒かったし、心細かったし、悲しかったと思うんだ。
 直前に一緒にいた人、思い当たることはないかなあ・・・。』


・・・・・・・・・。

自分たちで気づかせてあげたかった。

『もう一度聞くよ。
 何か思い当たることはないかなあ・・・。』


・・・・・・・・・。

『じゃ、A君本人に話してもらおう。
 みんなに心配かけちゃったんだから、なぜそういう行動になったのか
 ちゃんとみんなに話さなくちゃいけないと思うんだ。
 A君、話してくれる?』

「うん・・・。」もう涙がたまりはじめた。

『ゆっくりでいいから、泣いてもいいから・・・。ね?』

「うん・・・。」

ポツリ ポツリと 話し始めた。
B君、C君、他の子の名前も出始めた。
みんなの顔色が変わる・・・。

やっと話し終えた。
『よく話してくれました。話づらいことだったね・・・。』

教室は静まりかえった。

『B君、C君、今の話に間違いはありませんか?』
「はい。」
「はい。」

『そうか・・・。
 先生があんなに心配して学校中探してたの見てたよね。
 どうして話してくれなかったのかな?』
「あのことで いなくなったとは思わなかったから・・・。」
「だって、休み時間がはじまってすぐだったから・・・。」

B君、C君の目にも涙がたまりはじめた。

・・・・・・・・・。

しばらく沈黙した後、担任は話しはじめた。

『これはね・・・いじめの第1歩なんだよ。』
「えええ~!!!」
「うそ~!」

『クチげんかは、立場が対等だね。
 だけど、複数の人に一度に責められて、砂をかけられた。
 逃げ場がなくなってしまったんだ。
 教室に戻れないほど悲しくなった。
 誰の顔も見たくなくなった。
 心がつぶれてしまったんだ。
 それをね、いじめって言うんだよ。

 ただ今回はね、”死ね”とかそういう言葉の暴力はなかった。
 でも、そんなのは紙一重なんだ。
 もっと勢いが強かったら、言ってしまったかもしれない。
 その言葉が出なくて 本当によかった・・。

 今回のは・・・いじめの第1歩っていうことなんだよ。
 これが”しこり”になって長引いて どんどんエスカレートすると、
 ニュースで聞いたような、
 もっと悲惨ないじめに発展してしまうの。』


子どもたちはショックを隠せなかった。

ここからが真剣勝負。

『B君、C君は みんなで砂をかけたことを
 いじめだとは 思わなかった?』
「うん。」
「うん。」

B君、C君も泣き出した。

『一緒に遊ぶ約束をしてたのに来なかったから怒った?』
「うん。」
「うん。」

『どうして来れなかったのか、A君の理由は、わかった?』
「断ればよかったのに・・・と思った。」
「だって、オレたちの約束が先だもん。」

『そうか。悔しかったんだ・・・。』
「そう。」
「うん。」

『なのに、あやまらないから、頭に来ちゃった・・・。』
「うん。」
「うん。」

『じゃあさ。その上級生たちは知ってる?』
「うん。」
「知ってる。」

『その子たちから誘われたら B君やC君は断れる?』
「わからない。」
「困る・・・。」

『A君が困っちゃった気持ちは なんとなくでもわかる?』
「・・・。」
「うん。」

『すごく頭にきちゃったけど
 みんなで砂をかけるのは いけないことだったってわかる?』
「はい。」
「はい。」

『じゃ、砂をかけたこと、あやまろうか?』
「はい。・・・A君、ごめんな。」 涙・・・。
「A君、ごめんね。」 涙・・・。

『A君、どう? あやまってるよ。 許してあげる?』
「うん。」

『B君、C君。 A君は許してくれるって。よかったね。』
「うん。ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」

2人はポロポロと泣き出した。

『さて、A君・・・・。
 A君は、約束破ったのは自分のせいじゃないと思ったんだね。』
「うん。」
『でも、約束を守れなかったことは事実だよね。
 理由があったとしても、待たせたことに対しては
 ”行けなくてごめんね”って
 あやまった方が良かったんじゃないか?』
「・・・。」

『上級生たちのせいでも、それを断れなかったのも
 友達と約束してたのも 自分なんだから・・・。
 どう思う?』
「・・・。」

『B君やC君が悔しくて怒っちゃった気持ち、わからない?』
「わかる。」

『じゃ、今からでもあやまろうか?』
「うん。・・・B君、C君、昨日行けなくてごめんね。」
「いいよ。」
「いいよ。」


さて、ここからは全体指導。

『A君、つらい思いをしたんだけど、もうひとつがんばろう。
 A君が誰にも何にも言わずに、家に帰っちゃったことで
 クラスのみんなが心配したんだよ。わかる?』
「うん。」
『じゃ、みんなにもあやまらなくちゃね。』
「はい。・・・心配かけてごめんなさい。」

「いいで~っす!(OK)」

『今日は、みんなにとってもショックなことだったけれども
 本人たちが一番ショックなのはわかるね?
 A君も、B君も、C君も、ショックだった。
 これが、いじめだとは思わなかったんだから・・・。』

『いつでも、自分がいじめの当事者になるってことなんだよ。
 今回はその理由がわかったけど
 理由がわからないまま こじれてしまうこともたくさんある。
 他人事と思わないでね。
 誰にでも 可能性のあることだからね。

 ここでひとつ、みんなに守ってもらいたいことがあるの。
 それは、
 このことで、A君のことも、B君、C君のことも
 いつまでも何か言わないでほしいの。
 じゃないと、今度はクラスのみんなが、寄ってたかって
 B君とC君のことをいじめることになっちゃうんだ。わかる?』
「はあ~い!」

『知らなくてやったことなんだから・・・。』
「はあ~い!」

『みんなを信じてるよ。』
「はあ~い!」
「わかったあー!」
「だいじょうぶだよ。」


ここからは、親も担任も、子どもたちの様子をいつもよりもよ~く
見ていてあげなくちゃいけない・・・。

何気なく いつもと変わりなく・・・
子どもたちのいろんな様子を 
背中で感じ取ってあげなければならない。

その後のケアの方が大事だから・・・。

4年生っていうのは、ギャングエイジとも言われるけど
エネルギッシュで 好奇心旺盛で でも幼くて
高学年になると芽生える責任感にも まだ間があって
良くも悪くも いろんな芽がでてくる年頃。

良い芽は すくすくと伸びるように
悪い芽は 小さなうちに摘み取らないといけない・・・。

毎日が真剣勝負なの。
愛情をもって自分たちを見てくれているのかどうか
厳しい目で大人たちを見ている。


もう察しがついてると思うけど
この産休先生は すずりんです。
若いだけが取り柄の 給食と体育が得意の おてんば先生でした。
ただただ、子どもが好きで小学校の先生をめざした。

子どもは大好きだけど、なにせ若いだけで
経験の引き出しがない。
技術もない。
自分にできることは、子どもたちと一緒に勉強すること。
一緒に遊ぶこと。
子どもたちと一緒に笑うこと、泣くこと・・・。

最近ニュースでとりあげられるいじめ問題。
自分の経験からも、胸が締め付けられる思いがするの。
どうしよう・・・書こうかやめようか・・・。

ずっとずっと迷っていたのは、この話です。

ごく初期のいじめは 本人たちも”いじめ”という意識はないの。

いの間にかエスカレートして、
「まずいんじゃないの?」と思った頃には
誰もが抜き差しならない状況に陥っていて ブレーキが効かない。

「やめようよ」っていう一言が
矛先を自分に向けるようで 勇気が出ない。
なんとなくみんなの流れに乗ってしまう。

「助けて!」 必死の叫びの 扱いを間違うと
火に油を注いでしまうだけで 表面上はおさまっても
水面下のいじめが激しくなる。

自分の対処が正しかったのかどうかは 
子どもたちの表情から汲み取るしかないの。
沈んだ表情していないかな?
心から笑っている顔かな?
何かを訴えようとしていないかな?

元気な声で話せているかな?
字が小さくなっていないかな?
絵の色使いが 暗くなっていないかな?
教室や運動場の隅っこにポツンとしていないかな?

何気なく さりげなく 全身をレーダーにして
こどもたちの変化をみないと 
解決したとは 自信をもって言えない・・・。

担任の私にとっても とても苦しい出来事だった。

先生たちの現場も 千差万別 
いろんな状況があるんだろうな。
かばう気持ちも 責める気持ちも 私にはない。
現場のことは現場の人にしかわからないから。


はっきりわかっていることは
教育現場は 子どものためにあるんだよね・・・。

 
ニュースの当事者となってしまった 双方の子どもたちが 
かわいそうでならない・・・。

亡くなったお子さんは もちろん気の毒だし
その事実を一生背負って生きてゆく子どもたちの苦しさも
想像を絶すると思う。

ニュースを見るたびに 苦しい・・・。



当時、校長と交わした言葉の記録がみつかって 決心したの。
1週間あまり悩んだけど やっぱり書こう・・・。
そして 決心してからもまた 3日もあっためちゃった。



校長との記録は 『続き』 の中にあります↓。


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